東京高等裁判所 昭和43年(ネ)2066号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕五月六日当日被控訴人がその弟子とともに建物一階洋間の床張工事をしていたとき、竹内セキから電話で、床は二重張にせよとの要請があり、これに対して被控訴人が、当初の設計どおり一重で張ると答えたため収拾がつかず、被控訴人は堀谷に電話し、同人による解決を求めて現場を引掲げた。まもなく堀谷と竹内は話合をしたが、竹内は譲らず、大工を来させるなといい、堀谷も大工を引揚げさせるといつて別れた。一両日後の夜間、被控訴人が堀谷とともに現場に来てみると、すでに別の大工による仕事が行われていることがわかつたので、被控訴人自身が五月六日までに運び込ませた建築材料等をそこに置いたまま立去り、その後現場に赴くこともしなかつた。他方控訴人は大工大森利雄に残りの工事を請負わせ、同年六月一〇日頃引渡をうけて入居した。
右の事実によれば、被控訴人はみずから仕事を放擲したのではなくて、控訴人によつて仕事を中止させられたのであるが、その後第三者によつて仕事は完成しているから、被控訴人がさらに給付すべき仕事はなく、請負契約は終了したというほかはない。そして、被控訴人は事実上未完成建物を控訴人に引渡しているので、被控訴人が仕事の量に応じた請負代金の支払を控訴人に求めうることは当然といつてよい。
(近藤完爾 田嶋重徳 吉江清景)